認知症対策のエクササイズ コグニサイズ!
前回、前々回の記事で認知症の概要や対策について説明してきました。今回は実践編として、具体的にどんな運動をすればいいのか紹介していきます。
認知症予防を目的としたコグニサイズ
有酸素運動が認知機能の維持・向上のカギとなっていることは前回、紹介させていただきました。認知症対策としてより効果的に身体と脳の機能を向上させるために考案されたのが「コグニサイズ」です。
コグニサイズは身体と脳に適切な負荷をかけることで認知機能の活性化を図っていくものです。負荷が軽すぎては効果が薄いため、身体への負荷は息が軽く弾む程度の「 楽 ~ ややきつい 」と感じる程度が適切です。脳への負荷では、少し考えないとできないくらいの難しさが適切です。
正確な運動負荷を知りたい人は次の項目を参照してください。
運動時目標心拍数
運動強度60~70%の心拍数を目安とします。
計算式は以下の通りです。
目標心拍数 = 運動強度 × (最大心拍数 - 安静時心拍数) + 安静時心拍数
運動強度:今回は楽~ややきついとされる60~70% = 0.6~0.7
最大心拍数:207-(年齢×0.7)
【例】80歳の安静時の心拍数が71(拍/分)の人の目標心拍数
運動強度60%
0.6×【207-(80×0.7)-71】+71 = 119
運動強度70%
0.7×【207-(80×0.7)-71】+71 = 127
つまり119~127(拍/分)が目標心拍数になるわけです。
運動時の心拍数をしっかり確認したい人は安静時の心拍数を市販の心拍計で図り、計算してみましょう。
数字が苦手な人やややこしいことを色々考えるのが面倒な人は「息が軽く弾む程度」の負荷を意識して運動してみましょう。
コグニサイズの実践
それではコグニサイズの実践例をいくつか紹介していきます。
ウォーキング+α
有酸素運動は体力向上だけでなく、認知機能を向上させる効果が期待できます。まずはウォーキングを習慣化する工夫をしてみましょう。
- 歩数計をつけて、歩数を記録する
- ウォーキングコースをいくつか用意し、気分に応じて変えてみる
- おしゃれな、カッコいいスポーツウェアを買ってみる
- 季節の変化を写真に収めてみる
- ウォーキング仲間をつくる
- 地域のウォーキングイベントに参加してみる
ウォーキング中の課題
複数で行う場合
引き算
①引き始める数字を決める(80、100など)
②引く数字を決めて、ウォーキングをしながら交互に引き算をしていく。
しりとり
ウォーキングしながらしりとりをします。
1人で行う場合
・前日、前々日の朝・昼・晩のご飯の献立を思い出してみましょう
・1人引き算、1人しりとりでも効果はあります(1人でしゃべりながらウォーキングをしていると危ない人と勘違いされるかもしれないので頭の中で行う方がいいかもしれません 笑)
踏み台運動+α
高さ10㎝程度のステップ台を用意しましょう。ホームセンターなどで購入することができます。自宅の階段の手すりにつかまりながら行うでも可です。方法は以下の通りです。
- 踏み台の上に右足を上げる
- 左足を上げて台の上に乗る
- 左足を下げる
- 右足を下げて台から降りる
踏み台中の課題
複数で行う場合
・引き算
・しりとり
(方法はウォーキングと同様)
複数または1人で行う場合
- 踏み台の運動をするタイミングで「1」から順番に声を出して数を数える
- 3の倍数で数を数えながら手をたたく
- 30、50など最後の数を決めておき、数え終わったら、1から繰り返す
「3倍数」と「3のつく数」など課題にバリエーションを与えるのも良いでしょう。
コグニサイズを効果的に行うための5か条
コグニサイズは漠然とやっても効果があがりません。効果をより引き出すために以下のポイントを意識して行ってみましょう。
- 「ややきつい」と感じる運動を行う
- 慣れてきたら新しい課題を設けたり、課題の難易度を上げる
- 複数の運動を組み合わせて行う
- 少しの時間でも毎日行う
- 継続することが大切
コグニサイズ・運動を安全に行うための5か条
健康になるために運動しているのに無理な運動をして体を痛めてしまっては本末転倒です。特に、今まで運動してこなかった人が急に始めるときには注意が必要です。安全に行うための注意点は以下の通りです。
- 無理しないで徐々に行う
- ストレッチ・準備運動をしてから始める
- 水分補給に気を付ける
- 転倒に気を付ける
- 息を止めない
※体調が悪い時、最高血圧が180㎜Hgを超える時には無理に運動をせずに、安静にしてください。心臓病や神経疾患、骨粗鬆症や痛み、炎症症状がある方は医師に相談して行ってください。
転倒予防のために合わせてこんな運動も!
過去の記事で転倒・寝たきり予防に効果がある運動を紹介しています。興味がある方は合わせてどうぞ。
3回に渡り認知症について紹介させて頂きました。これらの記事が認知症に不安を抱えている人や身近に認知症の方がいる人の手助けとなれば幸いです。